スギナミ・ウェブ・ミュージアム

コミュかる・こぼれ話

「コミュかる」は、「コミュニケーション」と「カルチャー」を用いた造語で、2012年に創刊した杉並区の文化・芸術情報紙です(年4回発行)。区内での公演・チケット情報や文化人のインタビューをご紹介しています。
本コーナーでは紙面には掲載しきれなかった写真や「こぼれ話」を掲載しています。

音楽家:谷川賢作さん

2025年12月21日発行「コミュかるVOL.73」

Q: 賢作さんが初めて曲を作られたのはいつ頃なのでしょう?

それがハッキリ覚えてないんですよ、よく聞かれるんですが(笑)。5歳で作りましたとかすごいエピソードを語る方がいますけど。おそらく僕は、高校でロックバンドをやっていて、卒業後しばらくぶらぶらした後、ジャズの学校に入って、色々な音楽を勉強していた頃に作ったのが最初なんでしょうね。でも譜面が残っているわけではないですし、ハッキリとメロディを覚えているわけでもないので、最初に作った曲はこれです、と言えるようなものはないんです。ジャズという音楽の形態が即興演奏で作られていくものなので、特に意識したことがないんでしょうね、きっと。最初の曲はそんなふうに曖昧な記憶しかありませんが。

Q: 賢作さんは作曲家でありプレイヤーでもありますが、どちらが自分に合っていると思われますか。

父は翻訳や脚本、絵本など色々な仕事をしていましたが、「詩人」という肩書きには拘っていました。そうしたDNAを私も受け継いでいるんでしょうかね。「音楽家」として音楽に関連していることであれば何でもやってみたいと思っていますし、現に作曲と演奏のどっちが合っているかと意識したことはないですね。音楽活動の一環なので。プレイヤーとしての喜びということで言えば、ライブではお客さんの反応をダイレクトに感じられるところと、色々なミュージシャンとのセッションは楽しいです。どんな化学反応が起こるのか、自分でも毎回ワクワクしています。

Q: ウェブ上での表現活動、音楽活動についてどう思われますか。

やはりコロナは大きかったですよね。それまでは配信というものにまるでピンと来なかったですから。でもそういう形でやらざるを得ない状況でしたし、いつまでそれが続くのかもわかりませんでしたから、やるしかないですよね。そうした経験をしてみて思うのは、それまで以上に生の演奏を提供することが貴重な場であり、ベストな演奏を披露することがとても大事なことだと実感しています。横浜のライブハウス「エアジン」では生のライブに加えて、必ず有料配信もおこなっています。配信は1曲だけ無料で視聴ができて、全部見たい方は料金を支払うシステムです。コロナを経て見る方の選択肢が増えたのはよいことだと思います。私はウェブでの演奏は予告編として見ていただき、できれば生の場に来ていただければ嬉しいなと思っています。

Q: 俊太郎さんと賢作さんはこれまで朗読+音楽でコラボレーションされてきましたが、詩と音楽の共演はどんなところが魅力なのでしょう。

「間」だと思っています。父の朗読には音楽はいらないんですよ。なぜなら朗読そのものが音楽だからです。父は自分で気付いていたのかわかりませんが、とても音感やリズム感のよい人でした。でもその朗読の中にピアノがポロンと入る。朗読が一旦止まる。そしてピアノが止まってまた朗読が始まる。ここに独特の「間」が生まれるんです。朗読と音楽の間に生まれる「間」によって詩の理解が深まりました、とか、言葉が腑に落ちました、とお客様に言われたことがあります。何かお互いに共鳴するものを持っているのか、舞台で何かが生まれるのかはわかりませんが、それがコラボレーションの醍醐味なんでしょうね。よく事前にどんな打合せをするんですか、と聞かれることがあるんですが、特に何もしません。だって打合せをしても父が裏切るんですよ(笑)。この詩を朗読する、と決めていたのに直前になって「違う詩にする」と平気で言い出すんです。そんなこともありましたが、その裏切りもいつも驚きと発見があり楽しんでいました。なので、気にするのは終演の時間くらいですね。

Q: 40年以上の音楽活動の中でどれくらいの曲を作られてきたのでしょう。

自分が大切にしている曲で言えば200曲くらいですかね。劇中曲だとサスペンスA、B、Cパターンなど、すごく短い曲をいくつも作らなきゃいけなかったりしますし、PCに楽曲を保存する以前からかなりの数を作っていましたから、とてもじゃないですが数え上げることはできないです。でも自分が気に入っている曲、特に校歌はずっと歌い継がれていってくれればうれしいですね。

Q: 最近の活動と今後について教えてください。

最近は「父との思い出を語ってください」仕事がすごく多いです(笑)。さすがにもう語り尽くしましたけど。でも同じテーマでも、違う角度からの企画もありますので、父のことを知っていただく場が増えるのはうれしいことです。

音楽で言えば、TOKYO FM少年合唱団とのコラボはすごく楽しいですね。最近は子どもたちと何かを作り上げていくことは大きな喜びになっています。孫が小学4年生になるんですが、そういうのも影響しているのかもしれません(笑)。そんなふうに思っていると、不思議とそういう仕事が向こうからやって来るんですよ。長期に渡る仕事も着手し始めたばかりですしね。アドレナリンが湧き出るような、ワクワクする仕事を続けられることに、ずっと感謝の気持ちを持ち続けようと思います。これはやはり人とのつながりの中から生まれてくるものなのだと思いますので、これからもこうした縁を大事に丁寧な仕事を続けていくだけですね。

プロフィール

音楽家:谷川賢作さん

1960年東京都出身。現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者・続木力とのユニット「パリャーソ」で活動中。
父である詩人の谷川俊太郎との共作歌曲は、ソロ歌曲、合唱曲、校歌等多数。映画「四十七人の刺客」、NHK「その時歴史が動いた」テーマ曲等。
最新CD『聴くと聞こえる』(谷川俊太郎&谷川賢作)、BS11でオンエア中の「谷川俊太郎を歌う」作曲とピアノ担当。多彩な音楽表現で詩と音楽の世界をつなぐ稀有な存在である。

企画展: 谷川俊太郎 しらないのに なつかしいどこか
スギナミ・ウェブ・ミュージアムにて開催中
谷川賢作さんの楽曲とともにお楽しみください

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