スギナミ・ウェブ・ミュージアム
企画展: 杉並レジェンドアーカイブ  情景師アラーキー

ジオラマアーティスト 情景師アラーキー Diorama Artist Ararky

魂を込めて立体化する、唯一無二の「情景」職人

昭和ノスタルジーからアニメシーン再現まで、ジオラマアート界においてオールラウンドに活躍する情景師アラーキー。箱庭好きの少年がジオラマ作家として独立するライフストーリーを通して、人々を驚愕させる作品世界の源に迫る

小さくて緻密なものに宿る魅力

「情景師」という言葉は僕が造りました。会社員として働きながらネット上でジオラマ作品を発表していたので、会社にばれないように自分で付けた名前が「情景師アラーキー」。魂を込めてものをつくる職人のように、日常の中のさりげない光景を立体化していきたい、と思って付けました。
ジオラマを作るようになったきっかけは、幼稚園生の頃に母に教わった箱庭です。クッキー缶のフタに土を入れて、ミニカーを置いて。中国から渡ってきた「盆景」が日本で独自に「箱庭」に進化したのですが、日本人はとにかく小さいものを愛でるのが好きですよね。盆栽とか根付とか。ひな人形なんかも、平安貴族の姿をなんとかミニチュアにして手元に置きたい、というところから始まっているのではと思います。小さくて緻密なものに大きな魅力が宿っているんですね。

Ararky, Diorama Artist

Investing his spirit to create a 3D world: The One-and-Only Diorama Master From nostalgic Showa-era streetscapes to iconic anime scenes, Ararky,—famously known as "Diorama Master Ararky"—is an all-around force in the world of diorama art. This is the story of a boy who loved miniature worlds and turned his passion into a career as an independent artist.

1. The Charm of the Small and Intricate

My journey into diorama making began in kindergarten, when my mother taught me how to make hakoniwa (miniature box gardens). Originally brought over from China as penjing (bonkei in Japanese), it evolved into a uniquely Japanese art form. Japan has a deep-rooted love for admiring miniature things—there is truly immense magic in something small and meticulously detailed.

赤灯台の防波堤 作品展示ページで見る▶

少年時代の記憶を作品に

父親は長崎の五島列島生まれ。僕の作品「赤灯台の防波堤」はそこの奈良尾という小さな漁港がモデルです。夏休みに遊んだ思い出のある場所ですが、記憶の中の光景と、どこかにありそうな防波堤の風景を混ぜています。実物の灯台はもっと小さいんですよ。子どもには大きく見えたんですね。

この作品のスケールは1/32。ドールハウスなどでは1/12という基本的なスケールがあるんですが、僕の作品は1/24だったり1/64だったりとバラバラ。その題材に最適なサイズを選んでいます。ジオラマ作家として依頼される仕事では、要望に応えていろいろなサイズで作ります。

2. Turning Childhood Memories into Art

My piece A Red Lighthouse Over Breakwater is modeled after a small fishing port in Nagasaki. It’s a place filled with summer holiday memories, blending my personal recollections with the familiar look of a seawall that could be anywhere.
I don't stick to a single scale—my work ranges from 1/24 to 1/64, depending on what best suits the subject. When taking on commissions as a diorama artist, I build in whatever scale best fits the client's request.

手を汚して何かを生み出す仕事がしたかった

ジオラマやプラモデル作りを始めたのは中学生の時です。高校卒業後の進路で憧れの特撮の世界に進もうと考えたのですが、その当時は特撮を学べる学校が無かったので諦めました。時代はバブル絶頂期。あっさりと横文字職業に憧れて大学ではデザインを学び、プロダクトデザイナーとして東芝に入社したんです。入社して3年目くらいに、パソコン化の波がどっと押し寄せてきました。それまでドラフターで図面を描いたり、モックアップという1/1の模型を自分たちの手で作ったりしていたのが全部なくなって、パソコンとマウスだけの作業になってしまった。自分がやりたかったことからちょっとずれてきたな、と感じたんです。手を汚して何かを生み出したかったのに、作業がこれではクールすぎる、と。そこでバランスを取るために、趣味のジオラマ制作に本格的に取り組むようになりました。SNSで作品を発表し、応募した模型コンテスト(※)では賞もとりました。

※ 模型コンテスト:東武百貨店 池袋店 8階の催事場で開催される「タミヤモデラーズギャラリー」と合わせて実施される公募展「東武 タミヤモデラーズコンテスト」

3. Wanting a Job Where I Could Get My Hands Dirty and Create

I started making dioramas and plastic models in middle school. Later, drawn to the appeal of creative professions, I studied design at university and joined Toshiba as a product designer. Around my third year there, as work shifted heavily toward computers, hands-on creation started to fade. I wanted a job where I could get my hands dirty and build things myself, but the shift to computer work felt too clinical. That drove me back to my hobby of dioramas, and I began pursuing the craft earnestly.

「神崎商店」
「神崎商店」 作品展示ページで見る▶

作品を通して懐かしさを記録したい

2015年に会社をやめて独立したのですが、きっかけになったのは2014年の作品「リアルなゴミ捨て場のジオラマ写真」です。Twitter(現X)で拡散され、多くのメディアに取り上げられて大バズりしました。なぜこれがバズったかというと、技術だけではなくて、よくある風景でありながらゴミ捨て場をわざわざ再現する人はそれまでいなかった、という新鮮味ですね。また、発表当時はもう黒いビニールのゴミ袋は使われなくなっていて、ああこういうのあったよね、と懐かしさを感じさせた。その懐かしさをジオラマにして記録しておきたい、という僕の気持ちが、見る人の心に刺さったんだと思っています。

作品の見せ方やSNSの使い方など、戦略を練って情報発信をしてきたので、バズった時は驚きよりも作戦がうまくいったな、という気持ちでした。

僕の作品の多くは「懐かしさを記録する」という点で共通しています。駄菓子屋文化がなくなっていくのを見て、自分がやれることはジオラマとして残すことだと思って作ったのが「神崎商店」です。

4. Capturing Nostalgia Through Craft

My decision to go independent in 2015 was sparked by a piece I created the previous year: a photo of a remarkably realistic garbage dump diorama. It went viral on Twitter (now X) and caught the attention of numerous media outlets.

It included details like black trash bags—which are no longer in use—evoking a sense of "Oh, I remember those!" My desire to capture and record nostalgia through dioramas resonated deeply with viewers. Most of my works share this common theme of nostalgia and recording memories before they fade away.

「西瓜の夏」
「西瓜の夏」 作品展示ページで見る▶

最初にテーマがあって設計していく

「西瓜の夏」は、小学生の時に住んでいた熊本に多く残る、古い石橋がある情景です。モチーフの「大窪橋」は制作前には行ったことがなく、写真集で見てひと目ぼれした橋。僕の制作スタイルは、自分の中に思い描いた風景、テーマがあって、そこからジオラマを設計していくというものです。頭の中にある風景を、どの角度から写真に撮ったら一番理想的な形になるのかをまず考えます。夏、古い橋を渡る昭和の軽トラック、太陽光を反射する西瓜、涼しげにゆれる柳…。実際の大窪橋は幅がもっと狭いし自動車も通れないんですが、頭の中に描いたジオラマの完成予想図では橋を渡っている軽トラックの光景が素敵な景色として完成していたので、イメージ優先で設計しました。ただ、制作上の嘘はあっても、ヒマワリはちゃんと南向きに咲いているし、日の当たらない北側の川辺はじめじめしていて苔やシダが生えている。そうした小さなリアルが集合してこの情景を作っています。

5. Starting with a Theme and Designing Around It

Summer Watermelons depicts a scene featuring an old stone bridge, reminiscent of those scattered across Kumamoto, where I lived as an elementary school student. The bridge used as the motif, Okubo Bridge, was somewhere I had never visited before making the piece; I simply fell in love with it at first sight in a photobook. My creative process always starts with a vision in my mind, often with a specific theme, and I design the diorama from there. First, I think about which angle will capture the scene in my head as its most ideal, picture-perfect form.

杉並に住みついて30年

生まれは東京ですが、岩手、秋田、熊本、鹿児島、福岡、千葉…と、父親の転勤で転居ばかりの家族でした。大学生の頃、通学で使っていた中央線で熟睡していて、大学がある終点の高尾駅と間違えて飛び降りたのが西荻窪駅。授業に間に合わず諦めて街を歩いてみると、昭和感あふれる商店街がすっかり気に入り、街歩きに通うようになりました。結婚を機に西荻窪に住みたいと思いましたが、家賃が高すぎて…。徐々に駅から離れ、やっと見つけた理想のアパートは久我山駅近く。ここで今度は井の頭沿線の魅力の虜になって、浜田山、高井戸と沿線に住み、18年前に富士見ヶ丘に家を建てました。杉並の魅力は緑の多さと、歴史的な建物や街並みが多いことですね。

(取材日:2026年8月5日 自宅にて)

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取材・執筆:学芸員・水落聖名子(アートサポーター)
撮影・WEB制作:高橋政輝(アートサポーター)
取材協力:さかつうギャラリー

情景師アラーキー プロフィール

1969年、東京都生まれ。大学で工業デザインを学び、1993年に株式会社東芝にプロダクトデザイナーとして入社。会社員とジオラマ作家の二足の草鞋で活動を続ける。2014年、ネットで拡散された作品が「リアルすぎるジオラマ」としてテレビなどメディアで大きな反響を呼ぶ。2015年、独立してフリーのジオラマ作家に。ノスタルジックな情景作品を得意とし、「情景師アラーキー」として国内外で高い評価を得ている。CM、イベント、博物館用のジオラマ制作のほか、玩具メーカーのコンサルティングやアドバイザー、執筆などで活躍している。著書『凄い!ジオラマ[改]』『昭和に浸る、驚愕のジオラマ』など多数。

プレゼント情報です!

本記事の公開を記念してご本人の直筆サイン入り作品集を2名の方にプレゼントいたします。

ご希望の方は、スギナミ・ウェブ・ミュージアムのインスタグラム
(https://www.instagram.com/suginami_w_museum/)をフォローし、2026年10月2日に公開する当該プレゼント記事をお読みいただき、「プレゼント希望」、「アラーキーさんの本が欲しい!」等プレゼント応募コメントであることが分かるようコメントを入力ください。応募期限は2026年10月15日です。

※本のどちらかを選ぶことはできません。
※当選を装った偽DMにご注意ください。主催者の公式アカウント以外から当選連絡を行うことはありません。
※本キャンペーンはInstagramが支援、運営するものではありません。

サイン本プレゼント
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『ステキな広告ジオラマ』
著者:情景師アラーキー
発行:株式会社 誠文堂新光社
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『凄い!ジオラマ[改]』
著者:情景師アラーキー
発行:株式会社 誠文堂新光社
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6. 30 Years as a Suginami Local

Though born in Tokyo, my childhood was spent moving from place to place—from Iwate, Akita, and Kumamoto to Kagoshima, Fukuoka, and Chiba—due to my father’s job transfers. During my university years, I fell fast asleep on the Chuo Line during my commute. Waking up in a daze, I mistook Nishi-Ogikubo Station for Takao Station, where I was supposed to get off, and scrambled off the train.

I instantly fell in love with Nishi-Ogikubo’s shopping streets, which were steeped in Showa-era charm, and began visiting regularly just to stroll around. What I find most charming about Suginami is its abundance of greenery, alongside its wealth of historic buildings and nostalgic streetscapes.

Diorama Master Ararky - Profile

Born in Tokyo in 1969. After studying industrial design at university, he joined Toshiba Corporation as a product designer in 1993, balancing his corporate career with his work as a diorama artist. In 2014, one of his pieces went viral online, making waves across TV and other media for its uncanny realism. He went independent as a freelance diorama artist in 2015. Specializing in nostalgic scenes, he has earned high acclaim both in Japan and internationally under the moniker "Diorama Master Ararky." Beyond crafting dioramas for commercials, events, and museums, he actively works as a consultant and advisor for toy manufacturers, as well as an author. His published books include Amazing! Diorama [Revised Edition] and Immerse Yourself in Showa: Astonishing Dioramas, among numerous others.